シネフィル通り

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若草物語 (1964)

2020/04/06(Mon) 19:23
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4人姉妹の物語ですが
オルコットの「若草物語」(映画は1949年版が有名)ではなく
谷崎潤一郎の「細雪」に近いようで遠い(笑)
姉妹のうち次女と三女がひとりの男性を慕いあう青春ストーリー

東京オリンピックの年のトレンドを見れるのは面白い
学生運動、飛行機で上京、スポーツカー、団地住まい
デパートガール、アルサロ、スキー旅行
テレビも普及してきたころなのでしょう

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父親(伊藤雄之助)が母親が死んで1年もしないうちに
若い嫁をもらいイチャイチャするのに耐えかねた
由紀(浅丘ルリ子)、しずか(吉永小百合)、チエコ(和泉雅子)は
家出を決行、大阪から東京に住む長姉
早苗(芦川いづみ)団地に押しかけます

程なくして、由紀としずかはデパートに就職が決まり
3姉妹はアパートを借り暮らし始めました
初仕事の帰り、偶然にも由紀の幼馴染で弟分だった次郎(浜田光夫)と再会
報道カメラマンをしているという次郎は見違えるほど逞しくなり
由紀と次郎は付き合いはじめ、次郎は度々由紀の家を訪ねるようになります
そんな姉の恋人に横恋慕するしずか

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チエ子はアルサロ(アルバイトサロン、今でいうキャバクラ)で
バイトをはじめ、由紀としずかに咎められますが
長続きはせず、かといって落ち込むこともない明るく自由な性格

冬になり、3姉妹と次郎、チエ子のボーイフレンドの健吉(山内賢)は
スキー旅行へ行きます
次郎に突然仕事が入りひとり帰ってしまうと
東京に着いた日、空港から団地まで車で送ってくれた
大学生の圭一(和田浩治)が現れ別荘に招待してくれました
圭一は由紀を気に入り、ふたりはとこどき会うようになります

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衣装がお洒落で、芦川いづみが黒、浅丘ルリ子が赤
吉永小百合が水色、和泉雅子が黄色と4色に色分けされているのが素敵
ただ外国映画と違いデザイナーやスタイリストが公表されているわけでなく
衣装は「第一衣装」と「山田かつら」(笑)

次郎と圭一はひとり二役みたいに似ているけど
演じているのは別人(笑)

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姉妹が旅行から帰ると、若妻と喧嘩した父親が
大阪から早苗の団地に来ていました
早苗と由紀は父親を責め立て、父親は大阪に帰ることになりますが
ファザコンのしずかは「薄情」だとアパートを飛び出し
次郎のアパートに転がり込み、やむなく次郎はしずかを泊めます

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嫉妬した由紀は次郎を責めますが
何もなかったという次郎の謝罪を受け入れることにしました
今度はしずかが面白くありません
連日強引に次郎の取材に付いていっては
まるでアシスタントのように次郎の仕事を手伝います
姉から次郎を奪う気満々、嫌な女だわ~

由紀は由紀で圭一から大学を卒業したら結婚したいと言われ
はっきり断れないでいると、圭一の一家はすっかり結婚モード
しかし次郎と二股ををかけているので、これはまずい
「OKとは言っていない」と告白すると
お坊ちゃん、泣きながら家中の調度品をぶっ壊す始末(笑)

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でもこの時点で由紀はまだ次郎に気持ちがあったのでしょうね
「私より仕事が大事なの」と次郎に詰め寄ります
男と違って、この当時の女性は22,3で嫁に行かないと
焦る年頃なんだろうな
だけど次郎は仕事が軌道に乗り、やりがいを感じているのでしょう
今すぐ結婚しようと言えない

ふたりの男を翻弄する姉に、次郎を愛してやまないしずかが
「姉ちゃんなんか死んでまえ!皆死んでしまえばええーー」と叫びます
由紀も面倒臭いけど、この女が一番怖いわ
フラれたら絶対ストーカーになるタイプ
浮気でもしたら殺されるよ(笑)

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結局、由紀は金持ちの圭一を選びおセレブの世界へ
しずかは瀬戸内海に転勤になった次郎を追いかけていきます
ひとり東京に残されたチエ子は相変わらず自由気ままで

お見合い結婚をした早苗は、恋愛に情熱を傾ける妹たちを
羨ましく思いながら日常に帰っていきました
まあ、彼女がいちばん男の理想のタイプよね

日活の看板女優揃い踏みで、見た目はたいへん麗しいけれど
性格にクセがありすぎて共感するのは難しい(笑)
でもこの時代の日本人が強くて元気だったことは
感じることができました



【解説】ウィキペディアより
「若草物語」(わかくさものがたり)は、1964年12月31日に公開された日本の映画作品。日活の四大女優(吉永小百合、浅丘ルリ子、芦川いづみ、和泉雅子)が共演した。高度成長期を生きる若い女性たちの恋愛観や結婚観、幸福のかたちを健康的に描いた青春大作。上映時間は85分。
高村家の由紀(浅丘ルリ子)、しずか(吉永小百合)、チエコ(和泉雅子)の三人姉妹は、若い後妻をもらった父・勇造(伊藤雄之助)を気づかって家出を決行。伊丹空港から日航機に乗って、東京で暮らす新婚の長姉・早苗(芦川いづみ)のアパートに押しかける。やがて三人の妹たちは早苗と夫・宏一(内藤武敏)のもとを離れ、三人でアパート暮らしをはじめる。大阪弁で繰り広げられる三姉妹それぞれの恋愛模様が描かれる
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息子(1991)

2020/04/05(Sun) 16:37
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「いいではないか」

はじめは「祖国」というタイトルだったそうです
でも「祖国」だと民族分断みたいですものね(笑)
原作は椎名 誠の「倉庫作業員」

仕事のため都会に出ていく若者と、田舎に残ったひとり暮らしの老人たち
山田洋次らしく家族のあり方を丁寧に描写した秀作

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昭男(三國連太郎)は岩手で農業を営む高齢者で妻に先立たれひとり暮らし
地元に嫁いだ長女が同居を提案しても頑なに拒否しています
妻の1周忌にアロハシャツ帰ってくるは
定職にも就かない次男の哲夫(永瀬正敏)が家族の悩みの種

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東京に帰った哲夫は鉄工所でアルバイトすることにしますが
あまりのキツさにすぐ辞める決意をしていました
ところが納品先の受付の女の子があまりに可愛くて一目惚れ
征子(和久井映見)は聾唖者でしたが
彼女に会うため仕事を続け、彼女のために手話も勉強します(笑)
意外にも仕事を頑張る哲夫のことを職場の仲間も認め始め
哲夫は臨時社員に昇格させてもらえます

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いっぽう戦友会の集まりのため上京した昭男は
結婚して孫もでき、マンションを買った長男のところに泊まりに行きます
長男は一流大学を卒業し、大企業に勤める自慢の息子
なのに突然やってきた父親をどうするか
ふすまの向こうで夫婦喧嘩する声が聞こえる居心地の悪さ

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昭男は岩手に帰る決意をし
その前に哲夫のアパートにも寄ることにしました
哲夫がやっと落ち着いて仕事をしていることを知り安心し
しかも結婚したい女性までいるという
そして次の日、哲夫と征子からファックス電話をプレゼントされるのです

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社会から偏見を受けたことがある者同士だからわかる、孤独、苦しさ
感謝を言葉で口で言うのは難しいけれど、文字でなら伝えることができる
できそこないだからできた親孝行

立派だと思っていた長男は仕事で疲れ、楽しそうでなく
バカ息子だった次男のほうが、6畳一間のボロアパートでも幸せに暮らしている

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将来はどうなるかわからない
だけど今は家族が増えることがただただ嬉しい
その気持ちを思わず歌にする
これは言わずとも歓びを感じる見事なシーン
さすが三國連太郎と思ってしまう

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田舎に帰れば「息子に会って幸せだなお前は」と迎えられ自慢
そして雪深い中、玄関までたどり着いくと
妻が生きていたころの、家族の温かい団らんが見える

ここで昭男は夢を見ながら雪に埋もれて死んだな
と思ったのですが、そうではなく(笑)

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我に返ると、いつも通りの孤独な暮らしに戻っていました
違うのはわが家にファックスがついたこと

老いや家族をテーマに作品を作ると、説教臭くなりそうなものだけど
山田洋次はそういうのが一切ないのがいい

昭和から平成、令和になってもダメ男を撮り続けるんだな
きっと



【解説】allcinemaより
「男はつらいよ」の山田洋次監督が、椎名誠の『倉庫作業員』を基に、田舎に住む父親と都会でフリーアルバイターを続ける息子との葛藤を描いた感動ドラマ。三國をはじめ、永瀬、和久井ら出演者たちの抑えた演技が冴え渡る。
 東京でフリーアルバイターとして生活を送る哲夫。母の一周忌に岩手の田舎に帰るが、フラフラした生活に不満を持つ父・昭男とはギクシャクしたままだった。東京へ戻った哲夫は、下町の鉄工場で働き始める。そこで取引先の倉庫で働く征子と出会う。やがて、哲夫は征子が聾唖であることを知る……。
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蜘蛛巣城(1957)

2020/04/04(Sat) 20:47
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原作のシェイクスピアの「マクベス」はよく知らず鑑賞(笑)
言えるのは、舞台が日本の時代劇になっても全く違和感ない

山田五十鈴が怪演すぎて、三船敏郎がかすんで見えます笑)
大殿に忠誠を誓った主人公が、森の中でもののけから“予言”されます
もののけは、本当に存在していたのか
”予言”ではなく自分の潜在意識の中にある願望ではなかったのか
やがてその野望が妻の悪魔の囁きになる
恐ろしいのは、生きている人間のほうというオチ

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クライマックスの三船敏郎が全身に矢を浴びせられ最期を遂げるシーンでは
高校弓道部員が呼ばれ、本物の矢が使われるという命がけのスタント
さすがの三船も黒澤に「俺を殺す気か!!」とキレたそうです(笑)

お人好しと呼ばれたカメラマンの中井朝一も夜間撮影をめぐって黒澤と大喧嘩
その後「天国と地獄」(1963)まで黒澤作品を撮ることはありませんでしたが
「乱」(1985)では米アカデミー撮影賞にノミネートされました
(仲直りできてよかったね)

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北の館(きたのたち)の藤巻の謀反を鎮圧した鷲津武時(三船)と
三木義明(久保明)は、主君に呼ばれ
蜘蛛巣城に向かう「蜘蛛手の森」で出会った老婆から
「武時は北の館の主になり蜘蛛巣城の城主になる」
「義明は一の砦の大将、やがて子が蜘蛛巣城の城主になる」と告げられます

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ふたりが城に到着すると、主君から武時は北の館の主
義明は一の砦の大将という、老婆の予言通りの褒美が与えられました

それを聞いた武時の妻浅茅は、主君がその予言を知ればこちらの身が危ないと
主君が藤巻の黒幕で隣国の乾を討つために北の館へやって来た夜
浅茅は見張りの兵士たちを痺れ薬入りの酒で眠らせ、武時は眠っていた主君を殺し
臣下の小田倉則安と、主君の嫡男である国丸に濡れ衣をかけます

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小田倉則安と国丸は蜘蛛巣城に向かいますが
留守をあずかっていた三木義明は開門せず弓矢で攻撃
君主の亡骸を運んできた武時は三木義明の推薦で蜘蛛巣城の城主となり
三木義明の息子を跡継ぎに迎えようと準備します

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しかし浅茅は自分が懐妊したと養子縁組を拒み
馬が暴れ縁起が悪いからと三木義明親子が現れないまま宴は行われます
途中武時は、死装束に身を包んだ三木義明の幻を見て錯乱
使いの武者が三木義明は殺害したが、息子は逃がしたと報告に来ます

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まもなくして三木義明の息子を擁した乾の軍が攻め込んでくるという報が入り
武時はひとり「蜘蛛手の森」へ馬を走らせ、もののけの老婆を探します
老婆は「森が城に寄せて来ぬ限り、お前様は戦に敗れることはない」と言い
将兵たちにに老婆の予言を語って士気を高めさせるのですが

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浅茅は死産、そして不穏な夜が明けた朝に発狂してしまい
不気味に「血が取れぬ」と手を洗い続けます
そしてあろうことか霞の中「蜘蛛手の森」が動き城に向かってやってくる

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動揺した兵士たちは、叫ぶ武時めがけて無数の矢を放ち
武時の喉を1本の矢が貫いた時、ついに命尽きます
敵の軍勢は体に木の枝を付け、または大木を担ぎながら
森に化け攻めていたのです

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妻にそそのかされ君主を暗殺し、恩さえ忘れて盟友を裏切る
肝の小さい男は考えも浅い
武時は所詮、殿になれる器ではなかったのです

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黒澤作品全30作のランキングでは真ん中くらいの位置づけで
それほど人気が高い作品ではありませんが
わかりやすいし、面白いし、私はベストテン入りしてもいいと思います

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とにかく山田五十鈴のこの世のものでない雰囲気がすごい(笑)
浅茅という名前も、溝口の「雨月物語」(1953)の原作
「浅茅が宿(あさぢがやど)」から取ってるかも知れないですし

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女性を撮るのが下手が黒澤が、「女を撮らせたら溝口」の
影響をうけているかも知れない
そんな想像をしながら観てみるのも面白いと思います(笑)

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【解説】KINENOTEより
「生きものの記録」に次いで黒澤明監督が描く戦国武将の一大悲劇。脚本は「阪妻追善記念映画 京洛五人男」の小国英雄、「真昼の暗黒」の橋本忍、「嵐(1956)」の菊島隆三と黒澤明の合作。撮影担当は「続へそくり社長」の中井朝一。主な出演者は「囚人船」の三船敏郎、「猫と庄造と二人のをんな」の山田五十鈴、浪花千栄子、「嵐(1956)」の久保明、「ならず者(1956)」の志村喬、「ボロ靴交響楽」の木村功、その他千秋実、太刀川洋一、上田吉二郎、土屋嘉男、高堂国典、清水元、三好栄子、藤木悠、佐々木孝丸などのヴェテラン陣である。
黒澤明 コメント:0 トラックバック:-

わが谷は緑なりき (1941)

2020/04/03(Fri) 18:47
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原題は「HOW GREEN WAS MY VALLEY」(私の谷は緑だった)

世界中のホラー映画マニアから敬愛されている
ロディ・マクドウォールのデビュー作が、まさかこれだったとは(笑)

オープニングから名作の香りがプンプン(笑)
滅びゆく炭鉱の村から去ろうとしている初老の男が
炭鉱で働くきっかけとなった幼い頃を思い出していきます
らんぷちゃんは「砂漠の映画にハズレなし」というけど
「炭鉱の映画」もハズレなしかも(笑)

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丘の上に父親と立つ一家の末っ子ヒュ−(ロディ・マクドウォール)を
姉のアンハード(モーリン・オハラ)が「 ヒューーイ」と呼ぶと
「アンハラ−ド」と爽やかな声で返します
このワン・シーンで、神話化決定(まだ物語始まってないよ 笑)
カメラは師匠殿のアーサー・C・ミラー

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モーガン家では父親(ドナルド・クリスプ)と6人の息子のうち
ヒュー以外の長男から5男までが炭鉱夫として働いていました
仕事が終われば姉の湧かしたお湯で身体を洗い、食卓を囲む
給料日には玄関で全員が賃金を母親に渡します
汗と埃にまみれる労働がなにより神聖なもので
父親の家庭内での権力は絶対的なものでした

長男が嫁をもらうことになり、結婚式の日
アンハードは新任の牧師に心を奪われてしまいます
ヒューは長男の嫁に一目惚れ(笑)

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牧師はヒューが利発な子であることに気づき
学校に行かせることを両親に薦めますが
田舎者のヒューはクラスメイトから虐められ
教師までがクソで労働者階級蔑視の差別主義者

そこで父親の炭鉱仲間の元ボクサーがヒューに殴り合いを教え
炭鉱のみんなも応援して、ヒューは強くなりいじめっ子を撃退
そしたら今度はクソ教師が棒を持ってヒューに体罰を与えます
頭にきた元ボクサーは学校に行ってクソ教師を殴ります

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褒められた行動とは言えないけど、これにはスッキリ(笑)
しかし炭鉱が潤い、働いた分の給料がもらえていたのはこの頃まで
やがて資本の論理によって賃下げされ
炭鉱夫たちは労働組合を作って対抗します

しかし昔気質の父親は、ストに反対し4人の息子と対立し仕事に出ます
息子たちは家を出て行き、仲間からは裏切り者扱い
頭にきた母親は組合の集会に行き「亭主に文句があるなら私にかかって来い」と
演説するくだりは気分がいい

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だけどその帰り道、凍える川に落ちてしまい
助けようとしたヒューは重度の凍傷で寝たきりになってしまいます
ヒューを支えたのは牧師の献身的な介護でした
奇跡的にヒューは歩けるようになり
牧師とアンハードは愛し合うようになりますが

牧師は戒律のせいか、アンハードの幸せを願ってか
アンハードに結婚を申し込んできた炭鉱主の息子と一緒になることを勧めます
深く傷ついたアンハードはその男に嫁いでいきました

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やがてストライキは終わりましたが、炭鉱の仕事は激減
炭鉱夫たちは次々村を去っていきました
4人の息子たちも新天地を求め外国に旅立ちました
残った長男は事故死してしまい、ヒューは学校を首席で卒業したものの
進学を諦め炭鉱で働くことにします

アンハードは結婚生活に破れ(離婚はしていない)
夫の屋敷で暮らしていましたが、意地の悪い使用人によって
アンハードが牧師と不倫しているという噂が村中に流れてしまいます

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教会で集会が行われることになるわけですが、副司祭がまたクソで(笑)
僻みや妬みゆえの行動だろうけれど、牧師の後釜を狙い村人たちを唆すわけです
副司祭じゃなかったらアンタもボコボコだから
牧師は村人たちに卑劣さを非難し、村を去る決意をします

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ヒューにとって牧師は命の恩人、最後の別れをしようとした時
炭鉱から落盤事故を知らせるサイレンが鳴り響き
父親が生き埋めになったといいます

救出を志願する元ボクサーが、またまた好い所をもっていくぜ
炭鉱内が実にリアルで、まるで本物の落盤事故のよう
これもアーサー・C・ミラーマジック(笑)

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父親を見つけたものの、「お前は立派だ」と ヒューに 言い残して息絶えてしまう
そこで回想は終わります

そこからヒューが故郷に留まったのはなぜなのか
牧師とアンハードがその後どうなったのか
ジョン・フォードは一切触れていません

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だけど父親の独裁主義であっても、家族が離別しても
不況によって人々の心が荒んだとしても
過去は美しい思い出ばかりと語るヒュー

それはきっと愛する女性がそばにいたからだと思います

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大人の見るべき労働者賛歌映画でジョン・フォード中期の傑作
ヴィットリオ・デ・シーカの「自転車泥棒」(1948)にも似ているけど
こちらはやはりアメリカ映画らしく希望の残るラストでした



【解説】allcinemaより 
幼いR・マクドウォールが父を呼ぶ、冒頭の爽やかなヨーデルのような掛け声が耳について離れない。J・フォードの美しい人間讃歌である。19世紀のウェールズの炭鉱町。ヒューはモーガン家の末っ子で、家の男達はみな炭鉱で働く。学校ではいじめられっ子でも、皆の励ましで悪童に立ち向かい認められる芯のしっかりした少年だ。石炭産業は不況で、賃金カットに抵抗し、組合結成の動きが高まり、長兄イヴォーを始め、一家の若者たちはその先鋒に立つが、父(D・クリスプ)はこれに反対。息子たちは家を出、姉のアンハード(M・オハラ)とヒューだけが残される。新任の牧師グリフィド(W・ピジョン)と姉は秘かに魅かれあっているが、禁欲的な彼を前に、姉は不本意な結婚を承諾、南米へ渡る。川に落ちた母を助けて凍傷になったヒューを親身に励まして以来、グリフィドとは固い絆で結ばれ、彼の奨めでヒューは文学の世界に目覚める。が、長兄が事故死し、ヒューは止むなく学校を中途で辞め、兄に代わって働く。姉が実家に戻った時、グリフィドとの心ない噂が立つが、牧師は卑俗な村人の心を責め、教会を去っていく。ちょうどその日、落盤で父までが犠牲になるのだった……。不幸なことばかりの少年時代だが、成長した彼にはあくまでその月日は麗しく尊いもの--と語るフォード節に泣かされること必定の名作。オスカーには、作品、監督、美術、撮影(A・ミラー)、助演(クリスプ)、装置の6部門で輝いた。当初は西ウェールズでのオールロケが予定されていたが、大戦勃発のため、サン・フェルナンド・ヴァレーに広大なオープン・セットが建てられた。
洋画・名作/傑作 コメント:0 トラックバック:-

さらば、わが愛/覇王別姫(はおうべっき)(1993)

2020/03/31(Tue) 20:47
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「覇王別姫」とは四面楚歌で有名な項羽(こうう)と
項羽の愛人、虞美人(ぐびじん)の悲恋を描いた京劇作品のこと

これはすごい、大傑作
北伐、日中戦争、国共内戦、中華人民共和国成立、文化大革命という
時代の変化に翻弄されながら、叶わぬ愛を抱えて生きていく京劇役者の宿命
これほど見終えたあとに余韻が残る作品はありません

ただし、いい映画に出会うと
レビューが長くなってしまうのが私の困ったところ(笑)

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まず最初から子役がいい
京劇養成所に女郎の母親に連れてこられた豆子(ドウヅ)は
多指症の指を斧で切断され、捨てられるように預けられます
この養成所、今の基準でいったら児童虐待以外の何物でもありません
しかも女郎の子と差別され虐められる日々
そんなとき守ってくれたのが石頭(シートウ)でした
その時から豆子は石頭に想いを寄せるようになるのです

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この幼年期の豆子が本当に男の子か女の子かわからない
中性的な容姿で、見るからに性同一障害を思わせます

少年になった小豆は仲間の癩子(ライヅー)と養成所を脱走し
偶然にも北京を訪れていた名優が演じる「覇王別姫」を目にします
舞台の覇王(項羽)に心を奪われた小豆
ふたりは京劇役者になるために、再び養成所へ戻りますが
小豆を待っていたのは激しい折檻でした
その過酷さに小癩は自殺しまい、小豆に強い印象を残します

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そこから小豆が女形、別姫(虞美人)として稽古していくわけですが
台詞を覚えらず、何度やっても同じ個所で間違ってしまう
石頭は小豆の口にキセルを突っ込み
口から血を流しながら、覚醒する小豆の耽美なこと
小豆の才能は開花、舞台デビューすると
老師(年老いた先生)に気に入られ慰み者にされます

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やがて成長した小豆と石頭は
蝶衣(ディエイー)(レスリー・チャン)と
小楼(シャオロウ)(チャン・フォンイー)と名乗り京劇界のスターになると
今度は一座のパトロン袁四爺(イェンスーイエ)が蝶衣の美しさに惚れ
身体を求められ応じてしまいます

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レスリー・チャンが素晴らしい
レスリーの存在が完全に消えてしまって
蝶衣という女形が演じているようにしか見えない

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幼少から体罰で植え付けられたマゾヒズム
小楼との兄弟愛を超えたエロチシズム
色気を孕んだ両性的な美に、常に危険な香りが漂い
舞台から降りれば現実に引き戻される、悲しみ、憎しみ、嫉妬を
見事に演じ切っています

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しかし小楼は舞台の上の演技と、現実の生活は別なのだと
蝶衣の愛を受け入れることができません
遊郭に通い、ナンバーワンの菊仙(ジューシェン)(コン・リー)が
他の男に指名されるのを嫌い、勢いで結婚してしまいます
蝶衣は小楼を奪われた激しい嫉妬と、母親と同じ女郎のせいで菊仙を恨みます

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ちょうど日中戦争が激化したころで、蝶衣は袁四爺に頼み小楼との共演を拒否
北京は日本軍占領下となり、蝶衣は日本軍相手に「牡丹亭」を演じ
日本人将校から絶賛されますが、アヘンに溺れていきます

小楼は菊仙と堅気の生活になりますが、幼い頃から京劇しか知らない男
働きもせず闘蟋(とうしつ)(コオロギ相撲)に明け暮れる日々

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ふたりは師匠に叱咤され、再び「覇王別姫」を演じることになります
そして師匠の死後、かって蝶衣が拾って養成所に預けた
小四(シャオスー)を弟子にします
まさかこの小四が後に蝶衣を裏切るとは

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終戦後、日本軍は去りかわりに中華民国軍(国民党軍)がやってきます
彼らの観劇態度の悪さに蝶衣が演技できなくなってしまい
小楼が「日本軍に劣る」と言ったせいで舞台は大乱闘
菊仙は流産してしまい、日本軍相手に演じていた蝶衣は
漢奸(かんかん)裁判にかけられます

当時は日本軍へ協力したり、日本人と親しいと思われた者は
裁判にかけられ有罪となれば直ちに処刑されたそうです

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小楼は袁四爺に頼み裁判を有利にさせますが
蝶衣は「日本人は自分に指一本触れなかった」自ら不利な発言をします
それでも有罪にはならなかったのでしょう
小楼の支えでアヘン中毒を克服し再び舞台に戻りますが

今度は共産党思想の新体制が立ちはだかります
不安を忘れるため夫婦の愛を交わす小楼と菊仙を、窓から覗く蝶衣
新思想の小四はかっての養成所と時代が変わったと蝶衣のもとを去っていく
しかも小楼と組んで、蝶衣から主役を奪い取ってしまうのです

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やがて文化大革命の嵐の中、京劇は堕落の象徴として弾圧されるようになります
蝶衣と小楼も捕まり、群衆の目の前で自己批判を強要されると
小楼は蝶衣がいかに日本軍に協力し、アヘン中毒だっだこと
同性愛者であることまで暴露します

最も愛する人間に裏切られた哀しさよ
思わず女郎と結婚したと反撃してしまう蝶衣
すると小楼は菊仙の過去まで露呈し、離縁すると言うのです

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この状況下ではしかたがないのかも知れませんが
これでは菊仙が首を吊り、命を断ってしまうのも当然
生きていても拷問されるか、処刑されるだけなのです

蝶衣のものだった宝飾品を眺めて悦に浸っていた小四は
気が付けば共産党員たちに取り囲まれていました
共産党寄りの小四ですが、それも言い訳にしか聞こえないでしょう
文化大革命の凄まじい狂気

チェン・カイコー自身も文革時代、青春を奪われたひとりで
この一連のシーンにカイコーの想いが迸っているように思えます
実際には多くの文革のシーンを撮影しましたが大幅にカットされたそうです

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それから11年後
四人組の失脚により京劇が復活、ひさびさのリハーサル
衰えを感じる小楼に対し、時が止まったように美しく微笑む蝶衣は
幼い頃と同じ台詞間違いをする

この台詞こそが蝶衣を現わすそのものなのでしょう
自分は男として生まれたのか、女として生まれたのか
男でもなく、女でもない

そしてもうひとつのテーマが、進化し続ける中国
今の中国が中国史の完成ではないということ
新たな改革が巻き起こり、新しい中国の姿を見せてくれることは
ありえないことではない
そのことに中国国民も、隣国である日本人も備えなければいけません

伝統的文化である京劇と、中国の激動の50年間
そして男女の三角関係をひとつの世界にまとめあげた類稀なる名作

ひさびさの「お気に入り」登場
これを見たならハリウッドのLGBTものが
駄作にしか思えなくなってしまいます(笑)


 
【解説】allcinemaより
演ずることに全てを捧げた二人の男の波乱に満ちた生涯を、京劇『覇王別姫』を軸に描いた類稀なる傑作。身を持て余した遊廓の母に捨てられ、京劇の養成所に入れられた小豆。淫売の子といじめられる彼を弟のようにかばい、辛い修行の中で常に強い助けとなる石頭。やがて成長した二人は、それぞれ“程蝶衣”、“段小樓”と名を変え、京劇界きってのスターとなっていた……。一つ一つの出来事が物語全体を通し巧みに絡み合い、それが映画の進行につれ絶大な説得力を浮かび上がらせる。女形として選ばれたが、なかなか女に成り切れない小豆。しかしその辛苦を乗り越えたとき、彼の心は完全なる女として生まれ変わり、それは“段小樓”への包み隠さぬ想いともなる。だが心がいくら女であろうとも、男である限り“程蝶衣”に成就の手立てはない。“段小樓”へのやりきれない愛情を胸に抱いたまま、女であるというだけで優位に立てる遊廓の菊仙と反目する“程蝶衣”。だが生命の危機を前に、非情な選択を迫られる激動の時代の中では、信頼と愛情で繋がれたはずの二人の間に決定的な亀裂が生じる。二人の間を阻む存在を置くことで観る者に絶えず葛藤を与え、三時間に及ぶ長尺にも関わらずそれを感じさせない演出手腕は絶品で、中国第5世代監督のチェン・カイコーがその才能をいかんなく発揮した。幼年時代、仲間と共に養成所を逃げ出し、当時一番のスターが演じた『覇王別姫』を見る小豆。どんなに打ち据えられてもいつの日か舞台に立ちたいと涙を流す友人に、小豆の想いも同じだった。だが、新しい時代を迎えた京劇を前に、昔ながらの厳しい特訓を信じる“程蝶衣”はひとり取り残されていく……。全編に漂う何とも言えない遣り切れなさに、胸はかきむしられる。
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